2008年11月20日 (木)

不況突入は事実。それでもがんばる企業は多い。

 機械部品の商社に伺った。9月から急激に大手の発注が絞り込まれているという。特にミニ建機と言われるものに関連するものが厳しいらしい。輸出も中国向けでも落ち込んでいるという。
 更に別の部品商社の方の話では自動車や建材関係も10月くらいから落ち込みがはっきりしてきたということだ。

  どうも、大手はトヨタもそうだが急激に生産調整にかかったのは事実のようだ。ただ、この落ち込みに対して輸出企業は警戒しすぎている嫌いがある。中国は輸出依存では経済成長が維持できないから年間GDPの8%、つまり成長率と同等の経済対策を打って内需を喚起すると報道されている。
 これがそのまま実行されるかどうかはいえないけれど、たぶん中国首脳のこれまでの動きから言えば本気でかかるだろう。
 そのときは、中国の地方の公共投資が増加する。地方ではそれほどの大型建機を入れても後で使い道に困るだろうから、ミニ建機は需要に出る可能性は高い。なら、不況の今こそ、生産に急ブレーキをかけないという選択肢もある。

 今日訪問した企業は売り上げ減に耐えるだけでなく、M&Aをかけられるところがあればやるという。それが無理でも良い人材をリクルートすることは考えると経営者は話された。そのかわり、この企業は新商材の拡販や、業務改善も地道に進めている。こんな企業が不況の波を乗り越えたとき大きく変化するのだろう。

 それに比べて、ある会社の経営者は次の手などと言いながら、これまでの事業や従業員の質を考えずに動いている。足下でやることをすぐに実行することをおろそかにしていながら頭だけで動いて戦略的だと思っている。これでは従業員もやる気が失せる。
 中小企業に対して貸し渋りの動きはあるが、やる気があって経営者が信頼できる企業には積極的に支援しても良いのではないだろうか。
 経営者の対応で中小企業こそ優劣が分かれる時期なんだなとつくづく考えさせられた。

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2006年8月16日 (水)

内部統制構築で監査法人系の推奨する 「リスクアプローチ」は企業にとって負担になる

「リスクアプローチ」:
 内部統制体制構築のアドバイスを監査法人や監査法人系のコンサルティング会社に求めると「リスクアプローチ」をとることを押しつけられる。

 これは企業にとってのリスクをマネジメントする「リスクマネジメント」とよく似ているため混同される。リスクアプローチは会計監査法人が「財務諸表に関しての監査」を行う際の手法を指すもので、企業の抱えるリスクそのものではなく、粉飾決算、意図的な財務関連情報の隠蔽といった財務諸表の虚偽記載が起こりやすい分野を中心に企業の「統制手続き」を評価してポイントを絞って監査することを指す。具体的には「重要な勘定科目や財務諸表関連の開示事項」を金額比率などから絞り込んでそれに関連する「業務プロセス」をねらい打ちでコントロール手続きがあるかどうかをチェックするというものだ。

 監査法人から見れば監査で問題となる点を見落とさないためには有効な手法といえるがこれは監査法人がやることで、企業がこんな方法をとらなければならないというものではない。企業は「自分の会社の抱えるリスク」を財務諸表だけに限らず、また、勘定残高の多寡だけに限らず事業上の重要性から考える必要がある。

 ところが監査法人系のコンサルティング会社はこの「リスクアプローチ」 が「内部統制構築」のスタンダードかのように押しつける傾向がある。とくに、米国系の監査法人は勘定残高の90%に関わるプロセスの「コントロール手続きの文書化」を求める傾向がある。
 逆に言えば文書があればOKという何とも乱暴で企業に役立たない内部統制体制構築になる可能性がある。

 企業がとにかく日本版SOX法に対応すればいいというのではなく、この際、自社に役立つ内部統制の強化を図るための第一歩にしたいというのなら、振り回されないように注意して対処する必要があるだろう。

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2006年7月17日 (月)

COSO(米企業改革法、日本では金融庁基準の基になった)報告と企業改革法(SOX法)

 米国の企業改革法(SOX法)の骨格となったのが「COSO報告」。これは米国公認会計士協会、アメリカ会計学会、財務担当経営者協会、内部監査人協会によって設立された略称トレッドウェイ委員会(まるでロバート・ラドラムの小説に出てくるような名前だが))の「組織委員会」「COSO=the Committee of Sponsoring Organizations of the treadway Commission」という分科会が、1992年に公表した報告書です。企業統治を確保する仕組みとして何を企業に求めるべきかをまとめた産官学による報告です。

  つまり企業の中に内部統制組織機構を作り、仕組みを作り上げるためにはどうすればいいかを論じたものです。 
   その骨子は業務手続きを「文書化」し、不正の余地を洗い出すことを中心とした「内部統制」のモデルを提示したもの。更に、内部統制の目的の一つとして「財務報告の信頼性を担保する」ことと「法令の順守」を同時に述べています。
  このモデルは、「業務フロー」を分析し、「リスクコントロールシート」などにリスク内容(法令順守を含む)や改善策(業務効率化の余地を含む)をまとめ、運用を評価するという方法論の上に成り立っています。

  SOX法に対応するといっても、リスクの対象が「法令順守リスク」、「財務リスク」というだけで、このステップは、まさにマネジメントシステムそのものです。

  基本的に求められるのは

「経営者が法令遵守、遵守違反リスク管理および財務リスク管理に対して基本方針を出すこと」「方針に対して適切な管理策を定めること。」

「遵守が確認できる記録を残すこと」「監査役監査及び内部監査で運用状況を適切に確認しているか」

「法令遵守運用状況についての報告を事業報告書に記載し外部に確認後開示すること」といったことが中心になるのです。

 いわばISOマネジメントシステムで、財務および法令版の体制を取っておくことを求めているだけです。

 米国の「企業改革法(SOX=サーベンス・オックスレー法、正式名称 Public Company Accounting Investor Protection of 2002)」の404条はこのCOSOモデルを前提にしており、運用評価結果は「内部統制評価報告書」「内部統制監査」などにまとめることを「上場企業」に求めています。

  内部統制の目的として「業務有効性・効率性」「財務報告の信頼性」「法令遵守」をあげています。これが、「内部統制体制」を何故構築しなければならないのかという「内部統制の目的」です。

 内部統制を実現するために必要な要素として、「統制環境」」「リスク評価」「統制活動」「情報と伝達」「モニタリング」をあげています。

 「内部統制」体制を構築するために「必要な要素」ですが、この要素を見るとCOSOはプロセスを「整理」し、リスクを「洗い出し」、優先順位を決めて「業務手順化と目標」による「改善」を進め、その成果をまとめ必要に応じて「文書化」する。そして運用し「運用状況を評価」し、更に「改善」を図る。というステップを示していると言えます。

おまけ

内部統制の基本的要素
  1.統制環境:組織の風土。従業員の誠実性、倫理観、行動規範。力量。経営者の考   え方・方針。組織と責任と権限。
  2.リスクの評価:事業全体、活動(プロセス)の目的達成に関するリスクの識別。リスクの重み付け。リスク管理策の決定。(事業環境    の変化によって予測されるリスクを含む)
  3.統制活動:業務分掌。承認・権限の付与、検証活動、調整活動、業績評価活動、資産の保全の仕組み。
  4.情報と伝達:組織員が自己の責任に関わる情報を識別してアクセス、伝達する仕組み(経営者が経営と統制に必要とする報告も含む)。内部発生データ、外部データ・外部コミュニケーション情報の処理。内部コミュニケーション。外部とのコミュニケーション。組織員の役割の認識。
  5.監視活動:日常的監視活動、(管理活動と監督活動、経営管理活動)。独立的評価(リスク評価と日常監視手順の有効性評価)。監視活動結果の経営者、取締役会への報告。

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2006年7月 4日 (火)

企業統治(コーポレートガバナンス)とは

  詳しく企業統治を見ていきましょう。
 コーポレートガバナンスと横文字でよく言われる企業統治は「企業が適正で効率的な経営をおこなうための組織設計を行い、チェック体制を持つこと」をさす概念です。

 この中には定義にあるように「組織設計」「内部統制システム」の二つが含まれています。

 「組織設計」とは「会社の機関」をつくることと理解されています。
   つまり「社外取締役の任命」とか「執行役員制度の導入」「委員会の設置」といった「経営の執行と監督」を分離するといった手法の導入です。
   しかし、いくら「機関」という形を整えても業務手続きの違反や不正、過失、能力不足といつたことから生じる問題を防ぎ、適正な業務運営を確保することはできません。「社外取締役」や「会計監査人」「委員会」といった業務の外部の人間では実態を見抜くことは難しいのです。

   「業務の細かな仕組み」まで踏み込んだ実体が伴わなければ「適正で効率的な経営」は達成できません。
 「企業統治」を行うために必要な「仕組み」を「業務」に組み込んで動くようにするすることが「内部統制システム」なのです。
 つまり、業務プロセスの一部なのです。プロセスということはあくまでも「経営のための道具」なのです。「組織設計」も「内部統制システム」もそれ自体が目的ではありませんし、目的にしてはなりません。自社の業種・業態・規模に見合った道具として使いこなせるようなものにしないと目的と手段が逆転することにもなりかねません。

 企業統治の基本は組織設計より内部統制です。
  辞書的には「内部統制」とは「経営者が企業活動に関わる内部、外部の牽制や規制を調整し、説明責任を果たすことで経営の透明性、経営判断の適切性を確保する行為」とされています。

 「内部統制」は「経営者や経営幹部」がしっかりしていれば、なにも「内部統制システム」といったプロセスに組み込まれる仕組みにしなくても機能します。
 しかし、米国では1970年代におこった「ウォーターゲート事件」を切っ掛けに多数の企業で不正政治献金賄賂などの不法支出が見つかり、1979年に米証券取引委員会は「経営者報告書」の作成を義務づけました。
   ここで「内部統制」を仕組みとして構築すること提案し、「内部統制は経営者の資質だけでなくシステム化する」ことの重要性が認識されるようになったのです。

 最終的に「不正な財務報告全米委員会=略称トレッドウェイ委員会」の分科会「組織委員会=略称COSO」が「内部統制の統合的な枠組みについての報告書」をまとめ、これが欧米各国の内部統制についての指針になったのです。

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2006年6月10日 (土)

証券取引法等の一部を改正する法律案要綱

 6月7日に日本版SOX法にあたる金融商品取引法が決まった。

その中で内部統制に関わる概要は以下の通り。

 金融・資本市場をとりまく環境の変化に対応し、その構造改革を促進する必
要性にかんがみ、幅広い金融商品についての包括的・横断的な制度の整備を図
るとともに、公開買付制度及び大量保有報告制度その他の開示書類に開する制
度並びに金融商品取引所等に開する制度の整備を行う等、証券取引法、投資信
託及び投資法人に開する法律、銀行法、保険業法その他の関係法律の整備等を
行うこととする。

三 証券取引法の一部改正(第3条関係)
.1.題名等
  (1)題名の改正
   証券取引法の題名を「金融商品取引法」に改めることとする。
 (2)目的の改正
   この法律は、企業内容等の開示の制度を整備するとともに、金融商品取
  引業を行う者に関し必要な事項を定め、金融商品取引所の適切な運営を確
  保すること等により、有価証券の発行及び金融商品の取引等を公正にし、
  有価証券の流通を円滑にするほか、資本市場の機能の十全な発揮による金
  融商品の公正な価格形成等を図り、もって国民経済の健全な発展及び投資
  者の保護に資することを目的とすることとする。

3.企業内容等開示制度の整備
 (4)有価証券報告書の記載内容に係る確認書の提出の義務化
  有価証券報告書を提出しなければならない会社のうち、金融商品取引所
 に上場している有価証券の発行者である会社その他の政令で定めるものは、
 有価証券報告書の記載内容が金融商品取引法令に基づき適正であることを
 確認した旨を記載した確詔書を当該有価証券報告書と併せて内閣総理大臣
 に提出しなければならないこととする。
                 (金融商品取引法第24条の4の2関係)
  (5)財務計算に開する書類その他の情報の適正性を確保するための体制の評
 価制度の整備
  有価証券報告書を提出しなければならない会社のうち、金融商品取引所
 に上場している有価証券の発行者である会社その他の政令で定めるものは、
 事業年度ごとに、当該会社の属する企業集団及び当該会社に係る財務計算
 に開する書類その他の情報の適正性を確保するために必要な体制について
 評価した報告書(内部統制報告書)を有価証券報告書と併せて内閣総理大
 臣に提出しなければならないこととする。また、内部統制報告書には、公
 認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならないこととする。
       (金融商品取引法第24条の4の4、第↓93条の2第2項関係)

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2006年6月 1日 (木)

SOX法をマネジメントシステムから考える

 2006年5月1日より新会社法が施行されました。これに対応して上場会社では「内部統制システム」対応を続々と表明しています。「内部統制システム構築の基本方針発表」「取締役会の意志決定の証拠となる記録保管規定の策定」「リスク管理規定の策定」など様々な対応が試みられています。ただし、ほとんどは「方針や手続き」といった枠組みの設定の段階で具体的な中身まで詰まっていないところが大半のようです。

  しかし、「新会社法」に続いて、2008年3月に新会社法、証券取引法の改正に伴う「財務報告に係わる内部統制の評価及び監査の基準」(日本版企業改革法/SOX法)が施行される見込みです。
 2009年の3月期決算以降の企業報告はこれに従って行うことが求められます。
  この基準は上場会社とその連結決算対象会社に適用されます。今上場企業は自らも対応準備するとともに、関係会社にも対応体制を整えるように働きかけています。
 ところが、「基準」は具体性がないため、いざ具体的にどうやるのかとなると手探りの状態におかれているのが現状です。
  そのため、会計監査法人やコンピューターソフト会社が中心となってセミナーを開き、多数の参加者を集めています。

  ところが、セミナーの内容は、企業改革法の概念の説明(これはこれで大切ですが)で終わったり、方法論といってもごく一部要素しかカバーしていないので参加者も対応に苦慮している方が多いのも事実です。具体論にはいると会計監査法人は「財務報告」に偏ったり、IT会社は「文書管理システム」「統合会計システム」「アクセス権管理」といった内部統制の一部に係わる情報処理システムの紹介に終わったりで全体像が見えないのです。

 それはそうでしょう。
 日本版企業改革法の骨格となるはずの「財務報告に係わる内部統制の評価及び監査の基準案」は「財務報告」の名が冠されてはいても、求めるものは「内部統制」そのものを対象にしています。
 基準案は「財務報告に係わる内部統制」(財務報告の信頼性を確保するための内部統制)を中心としていますが、基準案そのものは「内部統制の評価の範囲の決定には金額的及び質的影響の重要性の観点から検討し決定する」と言明しています。その中には「主要な業務プロセス」が入っています。
 経営者は「財務報告全体に重要な影響を及ぼす全社的内部統制の評価」を行った上で「業務プロセスに組み込まれ一体となって遂行される業務プロセスに関わる内部統制」を評価しなければならないとされていますが、業務プロセスにおける内部統制を財務報告に係わるものと、有効性に関わるものと切り分けられるでしょうか。

 品質問題、法的問題などの事故を起こせば財務諸表、財務報告に大きな狂いを発生させます。

 監査法人はこれまで極端に言えば伝票や帳面を鉛筆なめなめチェックする「紙の上の監査」をやってきました。しかし実際には「不正会計処理」の前に、「伝票操作」の前に行われる運用、やること=プロセスに統制を欠けなければ財務報告の信頼性も何もあったものではありません。監査法人にはプロセスの正当性の監査の経験はないのです。
 もっぱら「財務報告」の監査を業務としてきた「会計監査人」は、「財務報告」や「資産の保全」は分かっても肝心の「業務活動」の実体は知りません。
 いきおい、「監査人」「監査法人」の提唱する「内部監査体制」は「財務報告の信頼性」を中心としたものになっています。
 監査法人の言う通り、金融庁「基準」を最小限満たすことを優先させる対応を取ったとして、結局、業務上の統制不備と見なされる問題が起こったとき、評価範囲の決定が間違っていたと、経営者は責任を問われることになるでしょう。

 本来の「内部統制」の目的の最初には「業務の有効性と効率性」か挙げられ、次に「財務報告の信頼性」、「(事業活動に関わる)法令の遵守」そして「資産の保全」と続いています。
 企業活動の最終成果は利益や売上高という財務諸表にまとめられますが、最終成果は企業の現場の活動の結果にすぎません。
 成果を保証するためには業務を統制しなければなりません。「業務が有効である」ことが達成されて初めて予算達成が図られるのではないでしょうか。
 内部統制は「数字合わせ」ではありません。
 結果としての「財務報告」や「法令順守」を求めるだけでなく、報告そのものの信頼性確保への取り組み、法令順守への取り組みなど結果に至るプロセスをしっかりと築く責任があります。
 

 また、IT企業は「コンピュータによる情報システム」、例えば「ERP=基幹業務(統合会計)情報システム」の必要性や「COBIT for SOX=企業改革法対応情報システム成熟度評価」といったコンピュータ対応を提唱しています。別のIT企業は「文書管理システム」をSOX法対応システムとして売り込んでいます。
 情報システムは業務活動に伴って発生するデータの処理で、経営活動のひとつのツールであってこれで経営活動に伴う内部統制をカバーすることはできません。人に対する統制の仕組みの限界をITでカバーできるものではありません。

  また、「内部規定」のような文書の山を築けとは「金融庁の基準」は一言も言っていませんし、会計報告に伴う「内部統制報告書」などの開示用の書式を整えたり、「内部発生データ」の一元管理を効率的に進めるだけ良いとも言っていません。
 形だけとにかく対応するに終わると、内部統制の先進国である米国で報告されるようにコスト(億単位の金がかかり、その割に費用が効果をはるかに上回る)ばかりかかってしまい、内部統制によるメリットより業務活動を阻害する弊害の方が表に出てしまうという危険が高まります。

 「内部統制」は有効に使えば、企業リスクを低減することもできます。業務の「ムリ、ムダ、ムラ」を発見することもできます。 
 そのためには、SOX法のために屋上屋を重ねるのではなく、多くの企業がすでに導入しているISO認証などのマネジメントシステムを生かし、意味のあるものにすることが最短であり、有効です。(実際のISO認証済み企業でもISO規格対応に終始して形だけの企業もあり、経営に生かすようにと見直しの気運が高まっています。)
 「ISOマネジメントシステム」を構築して活用している企業は「財務報告統制システム」を別に作るのではなく既存のシステムと統合した「統合マネジメントシステム」を目指すべきでしょう。

 ISOマネジメントシステムは共通して、「業務」を洗い、会社の「基本方針」に照らしてその業務の「リスク、影響」を評価し、改善のための「目標/実施計画」若しくは「日常管理策/手順」を設定し、その運用状況を「内部監査」し、全体を経営者が評価するという仕組みです。
 更にこれを実効あるものにするために社内外のコミュニケーションを明確にすると共に、従業員を教育、動機付けする仕組みを含んでいます。
 これは「統制環境」を整え、「リスクを評価」し、「情報の伝達」を円滑にした上で活動を実施する。そして「監視活動」を行うという米国の企業改革法(日本の投資サービス法のお手本)の基準となった「トレッドウェィ委員会報告=COSO」の考え方と合致しています。

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SOX法をマネジメントシステムから考える

 2006年5月1日より新会社法が施行されました。これに対応して上場会社では「内部統制システム」対応を続々と表明しています。「内部統制システム構築の基本方針発表」「取締役会の意志決定の証拠となる記録保管規定の策定」「リスク管理規定の策定」など様々な対応が試みられています。ただし、ほとんどは「方針や手続き」といった枠組みの設定の段階で具体的な中身まで詰まっていないところが大半のようです。

  しかし、「新会社法」に続いて、2008年3月に新会社法、証券取引法の改正に伴う「財務報告に係わる内部統制の評価及び監査の基準」(日本版企業改革法/SOX法)が施行される見込みです。
 2009年の3月期決算以降の企業報告はこれに従って行うことが求められます。
  この基準は上場会社とその連結決算対象会社に適用されます。今上場企業は自らも対応準備するとともに、関係会社にも対応体制を整えるように働きかけています。
 ところが、「基準」は具体性がないため、いざ具体的にどうやるのかとなると手探りの状態におかれているのが現状です。
  そのため、会計監査法人やコンピューターソフト会社が中心となってセミナーを開き、多数の参加者を集めています。

  ところが、セミナーの内容は、企業改革法の概念の説明(これはこれで大切ですが)で終わったり、方法論といってもごく一部要素しかカバーしていないので参加者も対応に苦慮している方が多いのも事実です。具体論にはいると会計監査法人は「財務報告」に偏ったり、IT会社は「文書管理システム」「統合会計システム」「アクセス権管理」といった内部統制の一部に係わる情報処理システムの紹介に終わったりで全体像が見えないのです。

 それはそうでしょう。
 日本版企業改革法の骨格となるはずの「財務報告に係わる内部統制の評価及び監査の基準案」は「財務報告」の名が冠されてはいても、求めるものは「内部統制」そのものを対象にしています。
 基準案は「財務報告に係わる内部統制」(財務報告の信頼性を確保するための内部統制)を中心としていますが、基準案そのものは「内部統制の評価の範囲の決定には金額的及び質的影響の重要性の観点から検討し決定する」と言明しています。その中には「主要な業務プロセス」が入っています。
 経営者は「財務報告全体に重要な影響を及ぼす全社的内部統制の評価」を行った上で「業務プロセスに組み込まれ一体となって遂行される業務プロセスに関わる内部統制」を評価しなければならないとされていますが、業務プロセスにおける内部統制を財務報告に係わるものと、有効性に関わるものと切り分けられるでしょうか。

 品質問題、法的問題などの事故を起こせば財務諸表、財務報告に大きな狂いを発生させます。

 監査法人はこれまで極端に言えば伝票や帳面を鉛筆なめなめチェックする「紙の上の監査」をやってきました。しかし実際には「不正会計処理」の前に、「伝票操作」の前に行われる運用、やること=プロセスに統制を欠けなければ財務報告の信頼性も何もあったものではありません。監査法人にはプロセスの正当性の監査の経験はないのです。
 もっぱら「財務報告」の監査を業務としてきた「会計監査人」は、「財務報告」や「資産の保全」は分かっても肝心の「業務活動」の実体は知りません。
 いきおい、「監査人」「監査法人」の提唱する「内部監査体制」は「財務報告の信頼性」を中心としたものになっています。
 監査法人の言う通り、金融庁「基準」を最小限満たすことを優先させる対応を取ったとして、結局、業務上の統制不備と見なされる問題が起こったとき、評価範囲の決定が間違っていたと、経営者は責任を問われることになるでしょう。

 本来の「内部統制」の目的の最初には「業務の有効性と効率性」か挙げられ、次に「財務報告の信頼性」、「(事業活動に関わる)法令の遵守」そして「資産の保全」と続いています。
 企業活動の最終成果は利益や売上高という財務諸表にまとめられますが、最終成果は企業の現場の活動の結果にすぎません。
 成果を保証するためには業務を統制しなければなりません。「業務が有効である」ことが達成されて初めて予算達成が図られるのではないでしょうか。
 内部統制は「数字合わせ」ではありません。
 結果としての「財務報告」や「法令順守」を求めるだけでなく、報告そのものの信頼性確保への取り組み、法令順守への取り組みなど結果に至るプロセスをしっかりと築く責任があります。
 

 また、IT企業は「コンピュータによる情報システム」、例えば「ERP=基幹業務(統合会計)情報システム」の必要性や「COBIT for SOX=企業改革法対応情報システム成熟度評価」といったコンピュータ対応を提唱しています。別のIT企業は「文書管理システム」をSOX法対応システムとして売り込んでいます。
 情報システムは業務活動に伴って発生するデータの処理で、経営活動のひとつのツールであってこれで経営活動に伴う内部統制をカバーすることはできません。人に対する統制の仕組みの限界をITでカバーできるものではありません。

  また、「内部規定」のような文書の山を築けとは「金融庁の基準」は一言も言っていませんし、会計報告に伴う「内部統制報告書」などの開示用の書式を整えたり、「内部発生データ」の一元管理を効率的に進めるだけ良いとも言っていません。
 形だけとにかく対応するに終わると、内部統制の先進国である米国で報告されるようにコスト(億単位の金がかかり、その割に費用が効果をはるかに上回る)ばかりかかってしまい、内部統制によるメリットより業務活動を阻害する弊害の方が表に出てしまうという危険が高まります。

 「内部統制」は有効に使えば、企業リスクを低減することもできます。業務の「ムリ、ムダ、ムラ」を発見することもできます。 
 そのためには、SOX法のために屋上屋を重ねるのではなく、多くの企業がすでに導入しているISO認証などのマネジメントシステムを生かし、意味のあるものにすることが最短であり、有効です。(実際のISO認証済み企業でもISO規格対応に終始して形だけの企業もあり、経営に生かすようにと見直しの気運が高まっています。)
 「ISOマネジメントシステム」を構築して活用している企業は「財務報告統制システム」を別に作るのではなく既存のシステムと統合した「統合マネジメントシステム」を目指すべきでしょう。

 ISOマネジメントシステムは共通して、「業務」を洗い、会社の「基本方針」に照らしてその業務の「リスク、影響」を評価し、改善のための「目標/実施計画」若しくは「日常管理策/手順」を設定し、その運用状況を「内部監査」し、全体を経営者が評価するという仕組みです。
 更にこれを実効あるものにするために社内外のコミュニケーションを明確にすると共に、従業員を教育、動機付けする仕組みを含んでいます。
 これは「統制環境」を整え、「リスクを評価」し、「情報の伝達」を円滑にした上で活動を実施する。そして「監視活動」を行うという米国の企業改革法(日本の投資サービス法のお手本)の基準となった「トレッドウェィ委員会報告=COSO」の考え方と合致しています。

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2006年1月24日 (火)

CSRは不祥事の免罪符か、新しいビジネスチャンスか

   企業には顧客がある。商品が満足できる物でなければ顧客は見向きもしない。業績あってのCSRも真実なのだ。しかし、その他の利害関係者も企業の業績に影響を与える。その代表的な者が投資家・金融機関と消費者だ。

    しかし、啓発された投資家や消費者はごく少数だというのも事実だ。それは仕方がない。顧客はその企業の製品・サービスを購入する。自分の金をその企業の製品・サービスと交換する。その時点でもう購入代金は戻ってこない。だからその製品が使うだけの価値があるかどうかを真剣に検討するし、その企業も信頼できるかどうか知ろうとする。
    これに対して、消費者という段階ではまだ直接にその企業の製品を買うわけではない。消費者は潜在的な顧客になるかもしれないが、購入するという必要性に迫られていないから気楽な者だし、真剣にその企業を知ろうとしない。だからちょっとした評判や気の利いた広告宣伝などから作られた一般的イメージを持つだけだ。

   長期投資を行う投資家は自己の資金を塩漬けにするのだから、やはり真剣に「財務諸表」を調査する。しかし、その会社の製品をを見るのではなく、製品やそれを生み出す活動の結果としての業績という面からではなく、それがもたらした「財務」という面を中心とした一面調査になる。といっても、その道の専門家を動員し、場合によっては経営者に面談しといった真剣な調査だからまだ良い。
  ただ、投資家の大半は資金を塩漬けにするのではなく、短ければ数時間、長くても数年で売却することが前提だ。彼らにとって企業は通過点であり、預金通帳でしかない。彼らが求めるのはその企業の中身の価値よりも、資本市場という金に置き換えられた側面での評判にならざるを得ないのは当たり前だ。

  資本市場の評判は広報や投資評論家・アナリストなどに対する対応の巧拙に左右される。しかし、それが経営者にとっては恐い。消費者は潜在顧客であり、それ全部が消費財関係企業には市場に見える。市場の評判か落ちれば即、売り上げが落ちるような恐怖感に繋がる。資本家の評判の低下、ひいては株価の低迷は資金調達の不安に繋がってしまう。

   だから、その評判を上げたい。CSRは経営者の「理念」からという面もあるが、企業の評判、評価を上げる手段という面が強いのが現実だ。CSRバブルの根底にあるのは経営者の自信のなさ。誰にコミュニケーションするべきか、不安なのだ。                                       

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2006年1月 4日 (水)

CSRと利益

 利益を継続するためには何が必要なのだろうか。

 それは、ビジネスに関わるニーズを掘り起こすことと、ビジネスに関わるリスクのコントロールをする(社会貢献をする=プラスのリスクも含めて)事から始まる。
 つまり、企業の社会的責任=CSRに企業の本業から離れたも活動として取り組むのは失敗の元になる。

 例えば日経ビジネス04/07/26のCSR総合ランキングの1位はキャノンだった。
 しかし、キャノンは、この時点でCSRという言葉は使っていないし、CSR担当部門は設置していない。

   この時点での上位企業には全てではないが共通項がある。
   1.古くから企業理念を明確に定めている。ことさらにCSR等という横文字は使っていない
   2.日本型経営を標榜している企業も多い(終身雇用など)。従業員の育成に力を入れている
   3.本業に力を入れている、技術など企業の競争力を地道に積み上げている
   4.社会奉仕だ、ボランティアなどを従業員に強制していない
   5.本業に必要な以外の金融や不動産などの投資はしていない
        といった点だ。

 逆に2004年の時点ではCSR等ことさらに標榜していた企業の方がランキングには顔を出す企業は少ない。生・損保業界などずいぶん力を入れている企業が多いが、この時点での活動の中心はボランティアの類で本業に関わることはあまり触れておらず、ランク外。そのあげく、2005年には支払いの不明朗さでいくつかの会社が指弾の的になり、業界の信用自体が地に落ちた。
  それに対して松下などは2005年暮れにファンヒーター事故で死亡事故まで起こしたが、全ての広告をリコール広告に切り替え、新幹線の電飾ニュースにまで自ら流した。当該機種が10年と保証期間を可成り超過した物であることもあってか、その正面からの対応に逆に株価が上昇している。

   世間は冷静だ。結局のところ、本業が評価される企業が、本業が好感を持って受け入れられる企業が上位に来る。

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2005年12月28日 (水)

企業は利益なしには永続しない

   企業は社会的存在ではあるが、それは活動資金無しには存続できない。活動資金は公共機関や公益法人のように税や寄付が入らない限り利益から生み出すしかない。そして利益は顧客からもたらされる。

 じゃあ顧客だけ見ていればいいのかと言えばそうはいかない。顧客はその他ステークホルダーの意見に左右される。従業員との関係がうまくいかなければ、労働争議とまで行かなくても企業の活気は失われ、従業員と接する顧客の不安、不満は高まる。関係が良ければ、活気が生まれ、自社に対する誇りが生まれ、顧客も好印象を持つ。
   役所との関係がうまくいかなければ様々な妨害を受ける。会社周辺の住民との関係がまずくなれば、悪評は千里を走る。NGOといった社会活動団体との関係も世評を生み、顧客に様々な形で影響を与える。株主や金融機関との関係は資金繰りや場合によっては経営介入に至ることもある。

 つまり、企業は社会の支持=ステークホルダーの支持が必要なのだ。
 また、企業はその活動の成果としての製品で顧客に貢献している。製品が役立つと支持されるから次もつきあってくれる。場合によっては顧客が顧客を呼んでくれる。
   更に、利益によって税を納め、金利、配当を支払ったり、株式値上がり益も提供できる。地域やNGOの求める活動もできる。つまり、社会に貢献できるのだ。

    そして企業は「永続することで責任を果たす」という一面も持つ。
   この二つの面が「企業は公器」だと言われる所以だ。企業は経営者の私物でもなければ、株主の物でもない。それが「法人」という特殊な言い方をされる所以だ。
    しかし、企業はその責任の第一は利益を継続して得続けて、その利益を顧客、従業員、社会に還元することだ。「企業の社会的責任」といっても利益を生み出せない企業に果たせるものではない。

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